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高輪ゲートウェイシティ開業で“人の流れ”はどう変わった?都心4エリアの文脈から読む位置づけを仮説

作成者: 会場探しコーディネーターメディア編集部|Nov 27, 2025 4:30:33 AM

駅と街が一体で立ち上がると、人の“滞在のしかた”はどう変わるのか。
高輪ゲートウェイシティの街びらきが始まり、いよいよ都心南部の人流が塗り替えられつつあります。

これまで「乗り換えのために通り過ぎる駅」にすぎなかった場所が、オフィス・ホテル・商業・レジデンスを備えた複合都市として立ち上がることで、誰が・いつ・どのくらいの時間・何を目的に滞在するのか、その“人の流れ”が変わり始めています。

この記事では、クロスロケーションズ株式会社の提供する人流分析プラットフォーム「Location AI Platform®」(以下、LAP)を活用して、完成前後の人流の変化とその背景をひもときながら、渋谷・新宿・品川・池袋という東京主要エリアとの文脈的な関係を整理します。
※詳細な分析は、後日公開予定のダウンロード資料でお届けします。

 

街びらき前の高輪ゲートウェイ駅は、2020年3月14日に開業したものの「“降りる理由”がまだない駅」でした。
オフィスワーカーの一部が品川・泉岳寺の代替駅として使う程度で、時間をかけて滞在する動機が弱い“通過点”だったと言えます。

そこに、高輪ゲートウェイシティとして駅前広場・商業・ホテル・オフィス・MICE施設が順次立ち上がったことで、使い方が「移動」から「滞在」へと徐々にシフトしています。

2025年3月27日のまちびらき以降、どのような変化があったかを具体的に見ていきましょう。

 

2020年3月14日に暫定開業した高輪ゲートウェイ駅は、「オフィスに着くまでの通過」「品川で乗り換えて終わり」という動きがほとんどでした。

 

▼2024年3月27日~11月24日

出典:クロスロケーションズ株式会社「Location AI Platform®」(2025年11月時点取得データをもとにBIツールにて可視化)

 

一方で「まちびらき後」は1年前の同時期と比べ、商業施設の営業時間に合わせて滞在者の増加している傾向が見られます。

駅前のTHE LINKPILLAR 1の開業および、駅の全面開業により、同エリアでの滞在理由が増えていることが顕著です。

 

▼2025年3月27日~11月24日

出典:クロスロケーションズ株式会社「Location AI Platform®」(2025年11月時点取得データをもとにBIツールにて可視化)

ここからみられるのは、

このような、周辺のオフィスワーカーにも生活行動を変えるきっかけになったことではないでしょうか。

つまり「高輪ゲートウェイに行くこと自体が1つの選択肢」として、日中の行動計画の中に組み込まれつつあると言えます。

実際の駅構内の様子(筆者撮影)

 

エキナカにはスターバックスや無人コンビニなどの店舗の他、Eki Parkと呼ばれる憩いのスペースもあります。

芝生のソファーで靴を脱いで寝転ぶ学生や子供たちが遊ぶファミリー層などの様子も見られ、電車の乗り降りや通行場所としての役割からカフェなどの店舗以外で「駅の中で滞在できる」ような空間が散りばめられていたのが特徴的でした。

フリーで演奏できるピアノも設置されており、夕方に訪れた男性が気ままに演奏しているなど、名前の通り公園のような落ち着いた自由な雰囲気が印象的です。

 

上記データを見ると、夕方以降はさらに変化が顕著です。

商業施設の物販・飲食に加え、ポップアップイベントやミニライブ、マーケットなどが広場で展開されることで「ちょっと覗いてから帰る」「同僚と1杯だけ飲んでいく」というライトな回遊が生まれやすくなっていると考えられます。

また、ホテル・MICE施設で開催されるカンファレンスや企業イベントの参加者が、終了後にそのままバーやレストランへ流れ、“アフターイベント”も街の中で自然発生しやすい環境に変わりました。

加えて品川・田町エリアで働くビジネスパーソンが、「品川駅ビルで完結」から「1駅だけ移動して、高輪側でゆっくり」という選択を取りやすくなり、夜間の滞在時間が底上げされていると言えるのではないでしょうか。

 

出典:クロスロケーションズ株式会社「Location AI Platform®」(2025年11月時点取得データをもとにBIツールにて可視化)

 

高輪ゲートウェイ駅の来訪者数は、2023年5月以降増加傾向にあり、新型コロナウイルスが5類に移行したことを皮切りに徐々に外出自粛ムードが解除され、人流が大きく動き出したとみられます。

その後高輪ゲートウェイシティのまちびきらきをきっかけに、さらに多くの人が来訪している様子が見られます。

なお、高輪ゲートウェイシティは、一気にすべてが完成したわけではなく、段階的に開業をしていく形になっています。
そのため、フェーズごとに人の流れも変わっていくと考えられます。

ざっくり整理すると、まちびらき以降は次のような段階的な“波”が想定できるでしょう。

  • 2025年3月27日、高輪ゲートウェイシティがまちびらき。同時にTHE LINKPILLAR 1(TLP1)が開業し、駅も全面開業フェーズへ。

  • 駅直結のTAKANAWA GATEWAY Convention Centerが本格稼働し、大型の学会や株主総会などMICE需要が入り始めます

  • JR東日本の発表によると、開業から100日で来場者200万人超。まずは「新しい街を一目見たい」層が押し寄せた形です。

  • 4月28日以降、KDDIがTHE LINKPILLAR 1 NORTHへ移転を開始し、7月1日に新本社がグランドオープンを迎えたことで、夏以降オフィスワーカーの人流増加がさらに加速したとみられます。


  • 2025年9月12日には、約200店舗規模の大型商業施設「ニュウマン高輪(NEWoMan TAKANAWA)」が開業。

  • ここから、ランチ・ショッピング・休日の家族利用など、日常消費ベースの来街者が増えるフェーズに入ります。

  • 2026年春には、地上6階・地下3階の複合文化施設「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」が開館予定

  • 展覧会だけでなく、没入型ライブ・パフォーマンス、伝統文化体験などを通じて、夜間・休日の文化消費を目的とした来街が本格的に立ち上がっていきます。

  • JR東日本は、2026年春のグランドオープン時点で、「1日の昼間人口10万人規模」を見込んでいます。

 

現時点で日別・用途別の詳細な来訪データは公開されていませんが、このオープンスケジュールを重ねて見ると、

① 見に来る人 → ② 働きに来る人 → ③ 買い物・食事に来る人 → ④ 泊まり・会議に来る人 → ⑤ 文化・エンタメを楽しみに来る人

という段階的な“人の波”が積み重なっていく構造が浮かび上がります。

MoNの開業と併せて、オフィスと商業施設の入るTHE LINKPILLAR 2も開業、さらに2026年4月にはレジデンスへの入居も開始されるとあり、来春からの人流の動きもさらに加速すると見込まれます。

田町方面の工事の様子(筆者撮影)

 

田町駅方面に広がるTHE LINKPILLAR 2およびMoNのエリアは工事中でした。

現在は高輪ゲートウェイ駅周辺への滞在が中心ですが、今後エリア拡大に伴い人の流れも変わると考えられます。

 

江戸期の高輪は、東海道の玄関口として“江戸に入る前の顔”を担った宿場町でした。
旅人が行き交い、なにかを“見に行く”というより「江戸へ向かう途上で一息つく場所」=通過の街だったと言えます。

明治以降、初の鉄道が敷かれ、品川駅が近代化の象徴として成長するなかで、高輪は「物流・通勤の線上にある住宅地・寺町」としての性格を強めていきます。
つまり、ここでもやはり、”線の上にある場所”という位置づけが続いてきました。

高輪ゲートウェイシティの誕生は、こうした歴史的文脈の上で見ると「通過文化」から「滞在文化」への大きな転換点に位置づけられます。

  • 駅と広場が同一平面で連続する設計により、改札を出る=そのまま広場・街に“参加”する動きになった。

  • イベントやマルシェ、アートインスタレーションが日常的に展開され、人と人、人とコンテンツが交わる“都市的舞台装置”として機能し始めている。

  • これまで高輪にはなかった「待ち合わせ」「散歩」「子どもを連れて遊びに行く」といった、余暇ベースの滞在行動が可視化されてきています。

 

歴史的に“通り過ぎる場所”だった高輪が「ここに集まる」「ここで何かが生まれる」場へと役割をシフトしている。

高輪ゲートウェイの再開発は、そんな長期的な変化を捉えることができます。

 

東京の主要エリアは、それぞれ固有の“文化”と“人の流れ”が形成されています。

 

谷は長らく、ヤングカルチャーとデジタルカルチャーの交差点でした。

  • ヤングカルチャー、音楽・ファッションのトレンド発信地として成長。

  • 近年はIT企業の集積とともに、スタートアップとクリエイターが混ざり合う“実験場”という側面が強化。

  • 若年層を中心とした来街構造とSNS拡散力が高く、新製品発表会、ポップアップストア、インフルエンサー施策など、「話題をつくりたい」ブランドにとって最適な舞台です。

ここで重視されるのは、「どれだけ話題化できるか」
空間そのものがメディアとして機能しているのが渋谷の特徴です。

 

一方、新宿は副都心としての機能と、歓楽街としての顔を併せ持つ多層的な都市です。

  • 超高層オフィス街、百貨店・大型商業施設、飲食街、歌舞伎町、都庁など、役割の異なるエリアが密集。

  • 日中のビジネスパーソン、地方からの買い物客、夜間の多国籍な観光客まで、時間帯によって“まったく別の都市”に見えるのが特徴。

  • カンファレンス、セミナー、資格試験、採用イベント、アイドルのリリースイベントなどができるイベントホール等も周辺に点在しており「大人数が集まること」自体に強いインフラを持っています。

加えて特徴的なのが、新宿駅をはさんで西エリアと東エリアとで全く違う街が展開されている点です。

西側は高層ビルの連なるオフィス街になっており、平日の朝から日中にかけてサラリーマンによる来訪・滞在が顕著で、一方で東側は大型商業施設や歌舞伎町などが集まり、土日含めて昼夜問わず人が訪れています。

エリアによる偏りは見られるものの、新宿は「マスを受け止める器」としてのポテンシャルが際立つエリアと言えるでしょう。

 

池袋は、サブカルチャーとファミリー層が共存する“継続来訪型”の街と位置づけできるでしょう。

これにはマンガ・アニメの聖地として豊島区も力を入れている背景が街づくりにも影響していると考えられます。

  • 劇場、アニメ・マンガ系ショップ、大型書店、アニメイト本店など、文化消費を支える施設が集積。

  • 女性向けコンテンツや2.5次元舞台など、特定ファン層が繰り返し足を運ぶコンテンツと相性が良い。

  • ファンミーティング、舞台挨拶、連続公演、同人イベントなど、「一度きり」ではなく“通う前提のイベント”が成立しやすい土壌があります。

 池袋は、「一度来て終わり」ではなく「何度も帰ってくる場所」としての強さを持つエリアです。

 

品川は、ビジネスと移動効率に振り切った“機動力の街”だと言えます。

  • 新幹線・羽田空港・都心各所へのアクセスが良く、国内外の出張拠点として企業本社・外資系企業が集積。

  • B2Bのカンファレンス、商談会、グローバルミーティングの会場として定番で、「日本各地・世界各地から集まりやすい場所」として選ばれてきました。

  • 一方で、オフィスと会議室・ホテルが中心で、広場・公園・街歩きといった“余白”は相対的に少なく、「終わったらすぐ駅へ戻る」という直線的な動きが主流でした。

つまり、品川は「移動効率とビジネス機能に最適化された街」とも言え、「交流を前提にした長時間滞在」という観点では、もう一歩余白が欲しいエリアでもありました。

 

こうした4エリアに比べると、高輪ゲートウェイの最大の特徴は、駅 × 広場 × 街 が最初からセットで設計されていることです。

MICE(Meeting, Incentive, Convention, Exhibition)を「ひとつの建物のなかに押し込める」のではなく、街全体に“にじませる”ことを前提とした設計思想が見えてきます。

 

高輪ゲートウェイシティは、屋内のコンベンションセンターやホールに加え、広場・デッキ・ストリートレベルのスペースが連続しています。

「メインコンテンツはコンベンションセンターで」「展示やマルシェは広場の一角で」「懇親会はホテルやレストランで」などのように、機能ごとに最適な場所を街の中から選べる構造になっていると言えます。

参加者にとっては「会場に閉じ込められる」のではなく「街に遊びに来たついでにカンファレンスに参加する」ような感覚が生まれるのではないでしょうか。

一方、主催者側から見ると、専用会場だけでは実現しづらかった「体験設計の幅」が一気に広がります。

この「分散前提のMICE設計」は、“街ごとMICE”という新しいフォーマットの実験場と捉えられます。

2026年春開業の残りのエリアも含めると、文化施設との連携もますます広がりそうです。

 

高輪ゲートウェイは、品川と同様に羽田空港・新幹線・都心各所へアクセスしやすい立地です。

  • 海外からの参加者は、羽田からダイレクトにアクセスしやすく、到着後すぐにホテルチェックイン → カンファレンス参加という動線が描きやすい。

  • 地方からの参加者も、新幹線で品川に到着してからワンストップで会場に向かえるため「東京駅 or 品川駅」に続く新たなハブとして機能。

こうした特性から、グローバルカンファレンス、IR発表、グローバルキックオフなど、“移動負荷を抑えつつ、都市的な体験を提供したいイベント”と非常に相性が良いエリアです。


高輪ゲートウェイシティは、環境性能やエネルギーマネジメントにも配慮した設計が進められており、
LEEDなどの環境認証取得が想定される街区です。

  • 環境配慮型の建物でMICEを開催すること自体が、企業のサステナビリティレポートに掲載しやすい“ストーリー”になる。

  • 交通アクセスの良さは、参加者ひとり当たりの移動に伴うCO₂排出削減にも寄与し、「集まりやすい場所を選ぶこと=環境配慮」というメッセージ設計が可能。

 など、屋外スペースや緑地を活用したプログラムを組み込むことで、ウェルビーイング・健康経営とも紐づけやすいイベント体験がつくれるのではないでしょうか。

言い換えれば、高輪ゲートウェイは
“イベントが街の一部として存在する”という、新しいスタンダードの実験場としても機能する。

渋谷の発信力、新宿の多様性、池袋の文化性、品川の機動性、それぞれの特徴を束ね、「MICE+街体験」をパッケージで提供できる“第5の選択肢”が、姿を現しつつあるのかもしれません。

 

高輪ゲートウェイの“駅そのもの”の使われ方も、じわじわと変わり始めています。

象徴的なのが、120日間限定で展開されていたアートと音楽を体感するナイトミュージアムバー&クラブ「ZERO-SITE Takanawa Gateway」による、駅構内で開催されたDJイベント「EKINAKA FRIDAYです。
これは「音楽を楽しむ駅=ミュージックステーション」をコンセプトに、金曜夜に駅構内で全10回開催されたDJイベントシリーズで、改札内の空間がそのままナイトクラブでもライブハウスでもない
“第三の夜の居場所”として駅のあり方を変えた実験的なイベントでした。

「会社帰りにそのまま駅で1杯」「イベントのあと、改札内で音楽を聴いてから帰る」といった、“駅で過ごす夜”という新しい滞在パターンが、少しずつ日常に紛れ込んできています。
ここには、駅を単なる交通インフラではなく、文化装置として再定義しようとする意図がはっきり見て取れます。

 

高輪ゲートウェイシティの完成形を語るうえで、複合文化施設「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」の存在は外せません。

MoN Takanawaは、延床約2万9,000㎡、地上6階・地下3階というスケールの文化施設で、2026年春に開館予定です。
半年ごとにシーズンテーマを設定し、展覧会だけでなく、映像と音楽が一体化した没入型ライブ・パフォーマンスや、日本各地の伝統文化・工芸とテクノロジーを掛け合わせたプログラムを展開するとされています。

これは、単なる「美術館」ではなく、劇場・ライブハウス・体験型ミュージアムが混ざったハイブリッドな“都市の舞台”です。

  • 昼間は、企業カンファレンスの前後に立ち寄るインセンティブコンテンツとして。

  • 夕方〜夜は、仕事終わりに「1ステージだけ観て帰る」ライトな鑑賞体験として。

  • 週末は、家族連れや観光客が一日滞在する“文化の拠点”として。

 

すでに駅構内では「EKINAKA FRIDAY」のような音楽イベントが動き始めていますが、
MoN Takanawaが開くことで、駅・広場・劇場が1本の線でつながる“高輪の夜”が描きやすくなります。

 

渋谷=クラブ/ライブハウス
新宿=劇場・映画館・飲食街
池袋=2.5次元舞台・アニメ系イベント
品川=ホテル&カンファレンス

という既存のナイトタイム文脈に対して、
高輪は「没入型ライブ+広場+ホテル+MICEがセットになった、滞在型の夜」を打ち出せるポジションに立つことになります。

 

高輪ゲートウェイの人流変化は、新しい駅ビルが建ったというレベルを超えた、「駅というインフラが“文化装置”へ変わる瞬間」でもあります

かつては通過の場だった高輪が、広場とイベント、ワークと余暇が混ざり合う“滞在の場”へと変わりつつある。

渋谷・新宿・池袋・品川という既存4エリアが持つ強みの隙間に、「街ごとMICE」「街ごと体験」を前提とした新しいポジションが生まれている。

その変化は、「どのエリアでイベントを開くか」という単純な会場選びではなく「どの都市文脈に自社のブランド体験を乗せるか」という問いを企業側に立てているとも言えます。

この変化が、渋谷・新宿・池袋・品川に続く“東京のイベント地図”にどんな影響を与えるのか。

その答えを定量的な人流データとイベント実績の分析から確かめたい方へ。

 

現在、人流データを活用した都内主要都市の特性やイベント適性の分析データをまとめています。

タイトル:「東京5エリア・人流から見るイベント適地考察 2025(仮)」

  • 渋谷・新宿・池袋・品川・高輪ゲートウェイの時間帯別人流・来街目的・イベント適性を比較分析

  • 「どのエリアで、どんな目的のイベントを打つべきか?」を設計するためのチェックリスト付き

 ※内容は変更となる場合がございます。

 

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