渋谷のハロウィンといえば、10月31日の混雑を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
しかし、スクランブル交差点周辺の人流データを見ると、10月31日が必ずしも10月で最も人出の多い日とは限りません。
本記事では、Location AI株式会社の人流分析サービス「LAP(Location AI Platform)」のデータを使い、2019〜2025年の各10月について、渋谷スクランブル交差点を中心とする半径50mのエリアの人の流れを分析しました。
10月31日の来訪者数や年代・性別、時間帯別の傾向を比較し、渋谷区のハロウィン対策との関係も整理します。
分析から見えてきた主なポイントは、次のとおりです。
この記事のポイント
※本記事に掲載する人数は、スマートフォンの位置情報をもとにした推計値です。渋谷区全体の人出や、ハロウィン参加者の実人数を示すものではありません。
LAP(Location AI Platform)とは、Location AI株式会社が提供する人流分析サービスです。スマートフォンの位置情報から人の動きを集計し、人口データを使って来訪の規模を推計します。
本記事の人数も、観測された位置情報をもとにした推計値です。
| ステップ | やること | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 利用許諾のある位置情報を集める | 提携アプリで位置情報の利用を許諾した利用者のGPS位置情報がもとになります。観測できるのは、その条件を満たす利用者です。 |
| 2 | 指定エリアの来訪・滞在を集計する | 位置と時刻を使い、対象エリアへの来訪や滞在を集計します。今回はスクランブル交差点を中心に半径50mを指定しています。 |
| 3 | 人口データで来訪規模を推計する | 住んでいると推定される町ごとに、観測された来訪の割合を国勢調査の人口に当てはめ、来訪規模を推計します。これが「拡大推計」です。 |
| 単位 | 指標 | 数えているもの |
|---|---|---|
| デイリー | すべての来訪 | 1日分の来訪。通り抜けなどの短い通行も含みます。 |
| デイリー | 5分以上滞在 | すべての来訪のうち、5分以上滞在したと推定された来訪です。 |
| アワリー | 来訪 | 1時間ごとに、エリアに入ってきた来訪を集計します。 |
| アワリー | 滞在 | その1時間に平均してエリア内にいた人数の推計です。前の時間帯から滞在している人も含みます。 |
1時間ずっといる人が1人でも、30分ずついる人が2人でも、平均滞在人数は1人です。
瞬間の最大人数や、その時間内にいた人の総人数とは異なります。
来訪は延べ数で、再来訪を別に数える場合があります。
実人数やハロウィン参加者数、個人の来訪目的を示す数字ではありません。
※出典:公式FAQ [8]。拡大推計の説明は、デイリー来訪の公式例に基づいています。
まずは、ハロウィン当日である10月31日の来訪規模と、訪れた人の属性を見ていきましょう。
すべての来訪と5分以上滞在では、減少幅や年代構成に違いがあります。
2019〜2025年の各10月31日を比較すると、すべての来訪・5分以上滞在のどちらも2019年が最多でした。
※出典:Location AI株式会社「Location AI Platform®」。取得データを集計・可視化しました。
※すべての来訪は通行を含み、5分以上滞在はその一部です。左右の縦軸は異なります。
すべての来訪は2019年の20.9万人から2025年の15.7万人へ、25.1%減少しました。
一方、5分以上滞在は4.0万人から1.7万人へ、57.4%減少しています。
短時間の通行を含むすべての来訪に比べ、5分以上滞在の減少幅が大きいことが分かります。
考えられる背景
通勤や買い物などで交差点を通る人の流れは大きく変わらない一方、立ち止まって過ごす人が減ったと考えられます。
渋谷区の来街自粛の呼びかけや路上飲酒の規制によって、交差点周辺に「とどまって楽しむ」行動が減った可能性があります。
ただし、7年間を通じて減り続けていたわけではありません。
すべての来訪は2020年と2021年に減少した後、2022年に増加しました。
5分以上滞在も、2022年と2024年には前年を上回っています。
直近の2024年から2025年にかけては、すべての来訪が0.5%増加した一方、5分以上滞在は12.2%減少しました。
すべての来訪に占める5分以上滞在の割合も、2019年の19.0%から2025年の10.8%へ低下しています。
若い世代の動きにも変化が見られます。
18〜29歳の来訪は、2019年と比べて2025年にはすべての来訪で39.3%、5分以上滞在で62.2%減少しました。
人数が最多だったのは、いずれも2019年です。
※出典:Location AI株式会社「Location AI Platform®」。取得データを集計・可視化しました。
※18〜29歳は10代(18歳以上)と20代の合計です。上段は人数、下段は各年・各対象の合計に対する割合です。
構成比が最も高かったのは2021年で、すべての来訪が36.3%、5分以上滞在が44.3%でした。
人数が減少していても、ほかの年代の減少幅によっては構成比が高くなるため、割合だけでは変化を判断できません。
2025年の構成比は、すべての来訪が22.8%、5分以上滞在が32.8%です。
5分以上滞在の方が、若い世代の占める割合が高いことが分かります。
男女別に見ると、18〜29歳男性の5分以上滞在は2019年の8,945人から2025年の2,920人へ67.4%減少しました。
女性も5,731人から2,631人へ54.1%減少しており、男女ともに減少が確認できます。
考えられる背景
若い世代がハロウィンを楽しむ場所が、渋谷の路上から、屋内のイベントやほかのエリアなどへ分散した可能性があります。
すべての来訪の男性比率は、2019〜2025年を通じて52.0〜55.2%、5分以上滞在では51.8〜58.6%でした。
※出典:Location AI株式会社「Location AI Platform®」。取得データを集計・可視化しました。
※男女比は各年・各対象の合計を100%とした割合です。丸めにより合計が100%と異なる場合があります。
2025年の男女比は、すべての来訪が男性52.6%・女性47.4%、5分以上滞在が男性52.1%・女性47.9%でした。
直近では、両指標ともおおむね半々に近い構成となっています。
年代別の構成を見ると、すべての来訪で最も多い年代は、2019〜2021年が20代、2022〜2025年が50代でした。
一方、5分以上滞在では7年とも20代が最多となっています。
※出典:Location AI株式会社「Location AI Platform®」。取得データを集計・可視化しました。
※年代構成比の分母は各年・各対象の合計(100%)です。10代は18歳以上が対象です。
2025年の20代は、すべての来訪が2.9万人(18.2%)、5分以上滞在が0.4万人(25.0%)でした。
これに対して50代は、すべての来訪が3.7万人(23.4%)、5分以上滞在が0.3万人(18.0%)となっています。
このように、通行を含むすべての来訪と5分以上滞在とでは、中心となる年代が異なります。
考えられる背景
全来訪で50代が最多となった背景には、日本の人口構成において50代の人口が20代より多いことも影響していると考えられます。
一方、5分以上滞在した来訪では、引き続き20代が最多となっています。
幅広い年代の人々が行き交う渋谷ですが、一定時間以上滞在する人には若い世代が多く、「若者の街・渋谷」という特徴が今も表れていると考えられます。
また、2025年の20代の人数は2019年と比べ、すべての来訪で40.3%、5分以上滞在で64.5%減少しています。
年代と性別を組み合わせた14区分で見ると、5分以上滞在では7年とも20代男性が最多でした。
※出典:Location AI株式会社「Location AI Platform®」。取得データを集計・可視化しました。
※年代×性別の分母は各年・各対象の合計です。男性内・女性内の割合ではありません。
20代男性の5分以上滞在は、2019年の7,547人(19.0%)から2025年の2,354人(13.9%)へ68.8%減少しています。
一方、すべての来訪では2022〜2025年に50代男性が最多となり、2025年は2.1万人(13.5%)でした。
指標によって、最も多い属性が異なることが分かります。
ハロウィン当日の混雑を捉えるには、1日の合計だけでなく、どの時間帯に来訪や滞在が集中したかを見ることも大切です。
ここでは、1時間ごとの来訪と平均滞在人数を分けて確認します。
アワリー来訪は、1時間ごとに新たにエリアに入ってきた来訪の推計値です。
2019年10月31日(木)は18時台の2.0万人が最多でしたが、2025年10月31日(金)は8時台の1.4万人が最多となりました。
2025年の10月31日は金曜日のため、8時台は通勤の時間帯と重なっている点に注意が必要です。
※出典:Location AI株式会社「Location AI Platform®」。取得データを集計・可視化しました。
※縦軸は年ごとに異なります。薄い帯は18〜24時です。対象は10月31日0〜23時台であり、翌11月1日早朝は含みません。
夜18〜24時の来訪を見ると、2019年の8.8万人から2025年の4.8万人へ、44.9%減少しています。
ハロウィン当日の来訪が、夕方から夜に集中する傾向は弱まっていると読み取れます。
考えられる背景
夜の来訪が減ったことで、相対的に通勤時間帯の人の流れが目立つようになったと考えられます。
2019年は木曜日、2025年は金曜日と、どちらも平日である点も踏まえて見る必要があります。
本記事のアワリー滞在は、その1時間に平均してエリア内にいた人数を示します。
2019年10月31日(木)は19時台の平均0.8万人、2025年10月31日(金)は12時台の平均0.9万人が最大でした。
※出典:Location AI株式会社「Location AI Platform®」。取得データを集計・可視化しました。
※滞在は1時間平均の人数であり、瞬間最大・時間内の総人数ではありません。縦軸は年ごとに異なります。
2025年は、夜よりも昼の時間帯に滞在人数のピークが来ています。
渋谷区では、ハロウィン時期の混雑や迷惑行為に対応するため、路上飲酒の規制や来街自粛の呼びかけなどを行ってきました。
人流の変化と対策の時期を照らし合わせてみましょう。
10月31日の人流を評価する際は、曜日による通常の人出の違いにも注意が必要です。
そこで、各年の10月31日と同じ曜日にあたる10月3日・10日・17日の平均と比較しました。
※出典:Location AI株式会社「Location AI Platform®」。取得データを集計・可視化しました。
※同年10月3・10・17日の平均との差です。夜は18〜24時、滞在は6時間平均です。対策単独の効果を表す値ではありません。
10月31日夜の来訪は、同曜日の3日間の平均に対し、2023年が14.4%減、2024年が8.0%減、2025年が20.7%減でした。
直近3年は、10月31日夜の来訪が同曜日平均を下回っています。
考えられる背景
ふだんの同じ曜日の夜より人が少ないことから、ハロウィン当日の夜は渋谷を避ける人が一定数いると考えられます。
来街自粛の呼びかけや、混雑・トラブルを避けたいという意識が影響している可能性があります。
ただし、すべての指標が同様に減少したわけではありません。
2024年は、1日全体の5分以上滞在が平均を24.6%上回り、夜の平均滞在人数も1.7%上回っていました。
一方、2025年は図に示した4指標がすべて平均を下回っています。
この比較は曜日をそろえた参考値であり、対策による減少率を示すものではありません。
2024年以降は、比較対象の日付も路上飲酒の通年規制が施行された後にあたるため、規制がなかった場合との比較にはなっていません。
2023年の来街自粛要請の強化や、2024年の路上飲酒規制の通年化は、10月31日夜の来訪集中が弱まった時期と重なっています。
渋谷区の主な対応を時系列で整理すると、次のとおりです。
ただし、2019年にも規制はあり、来街自粛の呼びかけも2023年に初めて行われたわけではありません。
また、2020〜2021年の社会状況、各年の曜日や天候、通常の都市活動、GPSデータの推計条件などは切り分けられていません。
今回のデータから言えるのは、10月31日夜の来訪集中が弱まり、その変化が渋谷区の対策の方向性と整合しているという点です。
ここまでは10月31日を中心に見てきましたが、10月のほかの日と比較すると、異なる特徴が見えてきます。
2019〜2025年の各10月について、10月1日から10月31日までの日別来訪を比較しました。
その結果、すべての来訪が最も多かった日は、7年とも10月31日以外でした。
※出典:Location AI株式会社「Location AI Platform®」。取得データを集計・可視化しました。
※各年10月1日〜10月31日のすべての来訪を示します。縦軸は7年共通の0〜25万人です。丸印は最多日、四角印は10月31日です。
※出典:Location AI株式会社「Location AI Platform®」。取得データを集計・可視化しました。
※各年10月1日〜10月31日の5分以上滞在を示します。縦軸は7年共通の0〜5万人であり、図9-1とは異なります。丸印は最多日、四角印は10月31日です。
一方、5分以上滞在で10月31日が最多だったのは、2019年と2020年の2回だけです。通行を含むすべての来訪と5分以上滞在とでは、人流が集中する日も異なります。
10月31日の数字だけで10月全体のにぎわいを判断すると、こうした違いを見落としてしまいます。
2025年10月のすべての来訪の最多日は10月17日(金)で、18.7万人でした。5分以上滞在の最多日は10月12日(日)で、2.6万人となっています。
※出典:Location AI株式会社「Location AI Platform®」。取得データを集計・可視化しました。
※順位は各年10月の31日間で算出し、同数は同順位とします。人数は元の推計値から小数第1位に丸めた値です。
これに対して、2025年10月31日のすべての来訪は15.7万人、5分以上滞在は1.7万人で、どちらも10月中15位でした。
また、すべての来訪の最多日は7年とも金曜日でした。
考えられる背景
週末前の金曜日は、仕事帰りの飲食や買い物で人出が多くなりやすい曜日です。
スクランブル交差点周辺では、ハロウィン当日の特別な人出よりも、こうした日常の人の流れの方が大きいと考えられます。
曜日に伴う通常の都市活動を考慮せず、人出の多い日をすべてハロウィン目的の来訪と見なすことはできません。
10月31日以外に人が多く集まる日は確かにあります。
ただし、このデータだけでは、ハロウィンを目的とした集まりが別の日に移ったと断定することもできません。
10月31日単日の来訪と、10月1〜31日の月間合計とでは、最多となる年も異なります。
※出典:Location AI株式会社「Location AI Platform®」。取得データを集計・可視化しました。
※日別来訪の延べ合計であり、同じ人の別日の来訪も含みます。左右の縦軸は異なります。
10月のすべての来訪の月間合計が最も多かったのは2022年の586.6万人で、10月31日単日が最多だった2019年とは異なります。
一方、5分以上滞在の月間合計は、2019年の87.3万人が最多でした。
考えられる背景
2022年は行動制限のない秋となり、街の人出が戻ったことが月間合計を押し上げたと考えられます。
2025年の月間合計は、すべての来訪が469.0万人、5分以上滞在が55.3万人です。
2019年と比べると、それぞれ16.6%減、36.7%減となりました。
10月31日単日の減少幅(すべての来訪25.1%減、5分以上滞在57.4%減)の方が大きいことが分かります。
※月間合計は日別来訪の延べ数であり、同じ人の別日の来訪も計上します。10月に訪れた実人数ではありません。
2019〜2025年のデータでは、10月31日の来訪規模は2019年が最大でした。
2025年は、通行を含むすべての来訪よりも、5分以上滞在や18〜29歳の来訪の減少が大きくなっています。
夕方から夜への来訪集中も弱まっています。
すべての来訪は2019年の20.9万人から2025年の15.7万人へ25.1%減少しました。
5分以上滞在は4.0万人から1.7万人へ57.4%減少し、すべての来訪に占める割合も19.0%から10.8%へ低下しました。
18〜29歳の来訪は、2019年から2025年にかけてすべての来訪で39.3%、5分以上滞在で62.2%減少しました。
5分以上滞在では男性が67.4%減、女性が54.1%減で、男女とも減少しています。
すべての来訪で最多の年代は、2019〜2021年が20代、2022〜2025年が50代です。
5分以上滞在は7年とも20代が最多で、年代×性別では20代男性が最多でした。
2025年の男女比は、両指標ともおおむね半々です。
来訪のピークは2019年の18時台から2025年の8時台へ変わりました(2025年は金曜日で、通勤の時間帯と重なります)。
夜18〜24時の来訪は8.8万人から4.8万人へ44.9%減少しています。
滞在人数(1時間平均)のピークは、2019年が19時台の平均0.8万人、2025年が12時台の平均0.9万人でした。
すべての来訪の最多日は7年とも10月31日以外です。
5分以上滞在で10月31日が最多だったのは2019年・2020年だけで、2025年の10月31日は両指標とも月内15位でした。
10月全体の合計が最多だった年は、すべての来訪が2022年、5分以上滞在が2019年です。
10月31日夜の来訪は同曜日平均に対して、2023年が14.4%減、2024年が8.0%減、2025年が20.7%減でした。
夜の来訪集中が弱まる動きは渋谷区の対策の方向性と整合します。
ただし、社会状況・曜日・天候・推計条件を切り分けていないため、対策による減少人数や減少率は算出できません。ここで示したのは、データから読み取れる範囲の考察です。
※対象はスクランブル交差点を中心とする半径50mのエリアです。来訪は推計の延べ数であり、ハロウィン参加者の実人数や来訪目的を示すものではありません。
データからは、10月31日夜の人の集中が弱まり、渋谷区も路上での飲酒や来街を控えるよう呼びかけていることが分かります。ハロウィンを楽しむなら、貸切の会場で開くパーティーやイベントという形もあります。
「会場探しコーディネーター」では、スクランブル交差点を眼下に臨める「スクランブルホール」をはじめ、渋谷エリア周辺のイベント会場をご紹介しています。社内イベントやファン向けイベント、仮装パーティーなど、目的・人数・予算に合う会場を無料でご提案します。
10月末の週末は会場の予約も集中しやすいため、早めのご相談がおすすめです。
以下は、分析結果を読む際に留意しておきたい集計条件です。
指標ごとの違いやデータの制約を踏まえて解釈する必要があります。
分析対象は、渋谷スクランブル交差点を中心とする半径50mのエリア(POI)です。渋谷区全体や路上だけの人流を示すものではありません。各年の10月は10月1〜31日の31日間、10月31日単日は0〜24時、夜間は18〜24時を集計しています。翌11月1日早朝は含みません。
来訪数は、GPSデータに基づく拡大推計の延べ数です。同じPOIでも、最後のGPS取得から4時間以上経過した後に再び取得された場合は、別の来訪として計上されます。実人数やハロウィン参加者数、職業、来訪目的は分かりません。[8]
※なお、計測データ上、外国人観光客の数は含まれていません。